苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
清水はウィスキーを飲み干して帰ろうと思った。

その時。

ぱたん、と、店のドアが開いた。

「……都、さん?」

その言葉に、ポーカーフェイスが得意なママさえ息を呑んだ。
都は水に濡れた髪を見てため息をつきながら、言う。

「もう、パパったら急に電話してくるんだもんっ。
 これ、清水に持っていってって言われたの。
 ここ、分かりづらくて――」

一息に喋る都に、ママはタオルを差し出した。

「分かりづらい店でゴメンナサイね」

「とんでもないです。
 悪いのは店じゃなくて、私に指示を出した人の説明のしかたですから」

都は長い黒髪をタオルで拭きながら笑って見せた。

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