姫に王子のくちづけを…
「じゃあゆっくり来ればよかったんじゃないの?」
『遅いと言ったりゆっくり来いと言ったりどっちだよ!』
「もうどっちでもいいから早く帰りたい!」
『む!……はぁぁー…分かったよ』
晴臣は反論できなくなった
勝者、斉藤!!
カンカンカン
私の頭の中で勝利のゴングとガッツポーズを決めている間
晴臣はきょろきょろと不審な動きばかりしていた
…それに気づいたのは
数十秒経ってからだった
「…どうしたの晴臣?」
『いや…由香里最近笑ってないなと思って…』
ドクン
唐突な質問だったけど
今までおちゃらけていた場の空気が
急に真剣なものになった
それは
いつもの笑ってる晴臣じゃなくて
すごく真剣な目をした晴臣が
ここにいたからだと思う