姫に王子のくちづけを…
『だったらなおさら
その告白してきた奴にはちゃんと断わらねえとな』
お兄ちゃんは
笑いながら私の頭をくしゃくしゃ撫でる
『もしもだよ…例えばゆぅがすっごく好きな奴と付き合うだろ?』
想像する
彼方と私がニコニコ笑って喋ってるところ
何だか
『好きな人』って言った時に
すぐさま彼方の顔が出てくるなんて
今までの私だったら考えもしなかったよね
『だけどそいつにはゆぅよりも好きな奴がいるんだ』
…森永先輩
《なんか本気で好きな人が出来たって聞いたよ?》
『そいつが、ゆぅを通してその好きな奴と重ねていると知ったら?』
彼方が
私と喋っている
だけど
本当に喋っているのは
森永先輩の仮面をかぶった私
笑顔を向けるのも
言葉を返してくれるのも
全部…全部それが森永先輩だから