姫に王子のくちづけを…
俺が呆然と突っ立っていると
由香里はてきぱきと奈津実の背中に背負われていった
おいおい
女じゃ無理だろ
『俺が運ぶよ、保健室だろ?』
そういうとなぜかギロッと睨まれたが
さすがに屋上から1階の保健室まで行くのは大変だと分かったらしく
由香里を俺に渡した
『…なるべく由香里に触らないでよ』
『運ぶのに無茶言う『由香里は!…男嫌いなの』
途中で遮られて耳にした言葉は
数秒で俺の思考回路を麻痺させるのに十分効果を発揮した
「ぅ…ん…?あれ?」
その時
俺の腕の中にいた由香里が眩しそうにうっすらと目を開けた
『由香里!大丈夫?…心配させないでよ』
「大丈夫だと思うよ、たぶんいつもの貧血だし」
俺の入る隙間が無いまま二人の会話は続いている