姫に王子のくちづけを…
う~…仕方ない
私は恐る恐る腕を首に回して背中に寄りかかった
「…今回は仕方なくなんだからね!」
そうよ
どうしても断れない理由があるから私はこんな事してんのよ
『…お前、天然の魔性の女だな』
彼方が何かボソッと呟いたが私には聞こえなかった
「え?何か言った?」
『何でもねえよ、んじゃあとりあえずお前先に運ぶか』
そう言うと彼方は奇跡的に中身が散らばらなかった段ボールを階段の踊り場の隅のほうに蹴った
「…蹴ってよかったの?」
『だって両手塞がってるし、どうせたいしたもん入ってねえだろ』
(どいつもこいつも揃って失礼)
それが終わると彼方はゆっくり階段を降り始めた
そのリズムが心地よくて
不意に
何だかずっとこのままでいたいと思った私は
やっぱりどこかおかしいのでしょうか…?