姫に王子のくちづけを…
『…由香里、そいつ誰、彼氏?』
ゾクッ
彼方のあまりにも低く冷たい言い方に
これは
彼方じゃないと思ってしまった
『由香里、誰こいつ?…由香里が男嫌いなのになれなれしい…』
晴臣が険しい顔で私をかばうように彼方との間に入ってきた
「ちょっ…晴臣!」
私が言葉を発すると
彼方の綺麗な眉がぴくっとかすかに動いた
『先生午後から出張でいないって…そいつに送ってもらって帰ったら?』
彼方は口許に薄ら寒い笑みを浮かべながらそう言い放ち
何事も無かったかのように保健室から出て行った
「彼方っ!」
急いで追いかけようとしたけど
さっきひねった左足に思うように力が入らず
そのままの勢いで床に座り込んでしまった