姫に王子のくちづけを…
『…なんだよ稜雅』
俺に呼ばれたのが相当嫌だったのか
彼方はめちゃくちゃ不機嫌な顔で睨んできた
…睨んでも俺のほうが背が高いから威圧感ないんだけどね
「・・・」
俺は彼方に背を向けて目的地まで歩き出した
…彼方はおとなしく俺についてきた
今日は外に出たくねえし…まあいつもの場所辺りでいっか
俺が向かったのは屋上に出るドアがある階段の踊り場
つまりすぐ近くにあるドアを開ければ雨がざあざあ降る屋上って訳だ
こんな雨の日に屋上まで来る馬鹿はいなくて
いつもより薄暗い階段に腰掛けて座った
彼方は座らなかった
『…何の用だよ稜雅』
「由香里ちゃんだっけ?…あの子お前の好みにどんぴしゃだな」
『おまっ……それだけを言いに来たのかよ』
彼方は一瞬動揺したがすぐにいつもの調子に戻った
分かりやすいなー