君だけのために
『沙弓、どーした?』
「うん、まだ会社?」
私って、凄いかもしれない。
普通に、いつもの私で京君と喋れてるんだもん。
冷静だな、意外と私。
『あぁ、会社……』
いつからそこは、京君の会社になっちゃったの?
「まだ帰れないの?」
ねぇ、帰れるって言って。
そしたら全部、見なかったことにするから…。
今すぐ沙弓の所に行くって…京君、言ってよ……。
『……まだ、帰れない…』
あぁ、やっぱりダメだね、京君
淡い期待も、もう消えちゃったんだ。
もう私と京君はおしまいなんだね。
『沙弓?』
ね、京君は、そういえば1回も私に‘好き’って言わなかったね
その時点で気付けばよかったんだよね。
ごめんね、京君。私も、きっと馬鹿だったんだよね。
「京君、京君の会社は…いつからレストランになったの?」
『…え?』
もう、おしまいなら我慢なんてしてやらないんだから。
「綺麗な人だね、女の人。そんな女の人がタイプだったんだね。」
私とは正反対じゃん、馬鹿。
『沙弓!』
もう、いつもみたいに名前を呼ばないで。
「最低だよ、京君はっ!」
そう怒鳴った私に、京君は慌てて周りを見て、私を発見した。
『沙弓、聞け』
「何を聞くの?聞くことなんて、ひとつもないっ!」