私のウソ、彼のキモチ
「メイ!今日から俺の彼女な。」


初めて見たこの男の笑顔。
突然腕なんか掴んできて、ずっと黙ってて無愛想な人かと思いきやイキナリ俺様告白してきて、それからこんな笑顔で言われたら素直に頷くしか出来なかった。


「ならメイ!放課後、ここに来い。一緒にマック行くぞ。」


強気な口調に、まるで人を見下したような目。
だけど微かに緩んだ口元で一気に優しい光が彼を包み込む。
そして彼は校門をくぐり抜け校舎へと入って行った。

私のウソ、彼のキモチ。
いけないことだとわかっていても、否定なんか出来ずに頷くことしか出来なかった。
あんな見ず知らずの男の告白なんて、どうでもいいはずなのに。
彼が見せた笑顔に左胸の心臓があっさりとやられてしまった。

だけど、ずっとウソを隠しきれる訳がない。
彼だって今日の放課後、もう一度会ってみたら冷静になって私が人違いだとわかるだろう。
だから放課後に自分からちゃんと伝えよう。
私のウソで彼のキモチを傷つかせないように。

・・・-


放課後になり私は約束通り彼が待つといった校門まで足を運ばせた。
そうすると校門の前では私を待つ彼の姿が見えた。


「よぉ、メイ!そういえばさ、メイって何年何組?」


近寄る私に気がつくと彼はいきなり聞いてきた。
さっきも聞かれたけど名前しか答えなかったからね。


「私は3年1組。それとね、実は私・・・。」

「1組・・・?隣じゃん!俺全然気づかなかったんだけど。」


また良いところで彼は私の言葉を遮る。
この調子だと一向に彼に伝えることが出来ない。


「ほら、マック行くぞ。」


そう言うと彼は足を進ませた。
制服のポケットに手を突っ込み気だるそうに鞄を肩にかけ歩く彼。
ふと気がつくと耳にはシルバーのピアスがしてあった。


「ね、ねぇ。ピアス・・・痛くなかった?」

「ん?あー、別に。まぁ少しは痛かったけど。」


そう言って彼は「メイもピアス開ける?」と聞いてきたので私は首を横に振った。
ピアスなんて開けたら耳から血が出そうで怖いだもん。


「なぁ、メイ。そういえばさ、なんでメイはいつも電車で寝てんの?」
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