私のウソ、彼のキモチ
「こっち見んな!」


真っ赤な顔をしてそんな事を言われたって全然迫力なんかないよ。
・・・どうしてそんなに顔を真っ赤にするの?
相当のヤリ手なんじゃないの?

彼の表情に疑問を持ちながらも赤く染まった彼の顔が何だか可愛らしく思えた。
でも、どうしてそんなに恥ずかしがるの?


「なんか、可笑しい。」


時間が経つにつれ、彼の赤く染まった頬を見ると可笑しくなってきた。
あんなに強気な口調でしかも俺様なのにこんな少しの事で顔を赤らめちゃうなんて意地っ張りの小学生みたい。


「何が可笑しいんだよ、バカ!」


声を出して笑う私に彼は不機嫌そうに問いかけた。
まるでさっきの赤い顔はなかったかの様ないつもと同じぶっきら棒の顔だった。


「だって可笑しいんだもん。俺様なのに恥ずかしがる所が。」

「・・・俺様?俺がいつ俺様だった?俺は俺だ!」


自覚してないの?
その口調や行動、それに告白の台詞だって明らかに俺様だったじゃない。
無自覚の俺様だなんて、そんな所も今は可笑しくて笑ってしまう。


「笑うな、アホ!・・・そーいえば、メイの笑った顔初めて見た。」

「え?笑った顔・・・?」


そうだ。
彼の前では笑ってなかったんだ、私。


「やっぱメイの笑った顔、好き。」


やめて。
そんな事、言わないで。
思わず口から零れそうになった言葉。
急にウソをついているという事の罪悪感が私を襲ってくる。

そうだ、この人は私を電車でいつも見かける女の子と勘違いしているんだ。
一瞬にして頭の隅にあった事実が私の頭の中を駆け巡る。
完璧に言うタイミングを逃したから今更“私、電車にいつも乗ってる女の子じゃない”だなんて口が裂けても言える訳がない。


「ごめん。私、用事思い出したから帰る。」


彼には悪いけど私はここにいられない。
襲う罪悪感から私はそう思った。


「は?用事がないから俺と今いるんだろ?今更、用事なんて思い出して俺が帰らせる訳ねぇだろ。」

「・・・私を帰らせないで何するつもり?どうせ変態な事したいって思ってるんでしょ?」


そう強気で言ってみせると彼は再び頬を赤らめた。
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