私のウソ、彼のキモチ
「だからそんな事しねぇーって言ってんだろ、バカ!」


まだ火照っている頬を隠すかの様に彼は私を見ずにどこか遠くの方を見て言った。
罪悪感があるのにも関わらず私はそんな彼を見ていると可笑しくて笑いが出てしまった。
やっぱり何度見ても彼の真っ赤に染まった顔は意外過ぎて見ていて楽しい。


「ウソだよ。もう少しぐらいなら、ここにいる。」

「・・・おう。当たり前だろ。」


少しの間、沈黙になった。
聞こえてくるのは目の前にいるサッカー部の声と校舎から聞こえてくる吹奏楽部の音色だけ。

なんで黙り込むの?
そんな事を思いながらも結局は沈黙に耐えきれない私が口を開いた。


「ねぇ。何で、さっきあんなに照れたの?」

「・・・そんな事、聞くな!」


少し考えた後に彼はそう言った。
“聞くな”と言われると余計に聞きたくなる。それが人間の心理というもので私は気になって気になって仕方がなかった。


「ねぇ、どうして?教えてよ。」

「嫌だ。」

「教えて。」

「嫌だ。」


そんなに理由を隠されるとますます知りたくなる。
何か凄い理由でもあるの?
もしかして女の子に触ったりするのは昔何かあってトラウマになったとか?
・・・でも彼に限ってそんな事はなさそう。


「教えてくれないと、帰るよ?」


中々、理由を教えてくれない彼に私はとうとう最終手段に出た。
彼はどうしても私に帰って欲しくないんんだよね?
ならこれならきっと彼も教えてくれるはず。
そんな期待を胸に彼の返事を待つ。


「帰れば?」


は?
返って来た言葉は意外なもので、あんなに帰るなと言っておいたくせに今度は簡単に帰らせてくれるなんてやっぱり彼は自己中心的だ。
それともこれは彼の意地だろうか。


「・・・じゃあ、帰る。」


こちらも負けじと彼に対抗する。
ここで“何で今度は簡単に帰らせるの?”と聞いたら負ける様な気がしたからだ。
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