Love Short Story's

・お隣の年上お兄さん

目覚めの良い朝。カーカーとカラスの鳴き声が耳を尖らせる。
大きな欠伸をした後に玄関の戸を開け家を出た。そう、学校に行くためだ。
「いってきます。」と小さな声で呟き外に踏み出る。


「あ、おはよう。」


ふと隣からした声は毎朝必ずといっていい程、会うお隣の家に住む年上のお兄さんだ。


「おはよーございます。」


そう言うとお兄さんはいつも通り笑顔を返し、自分の通う大学へと単車で向かって行った。

いつもと何も変わらない朝。
私は前を単車で走っているお兄さんを見ながら足を進める。次第にお兄さんの姿も小さくなっていき、いつしかお兄さんの姿は見えなくなっていた。

少し遠めの高校に通う私はバスではなく徒歩で行っている。重い足を引きずる様に学校に向かうのは、朝が苦手だからだ。
もう少し寝ていたいのに起こされてしまう。

だけど毎朝見るお兄さんの笑顔で、元気をもらっている気がする。
あの優しい笑顔を見ると安心する。これが包容力というものだろうか。包み込まれてしまいそうな笑顔だ。

お兄さんのおかげで朝からパワーをもらって毎日なんとか平凡に暮らしている。

だから、信じたくなかったのだ。
いや、信じられなかったのだ。
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