Love Short Story's

・ゆるゆると、壊れて行く音がした

好きな人と両想いになる。
それは凄い事だと誰かが言っていた。

好きな人ができた日には毎日、キラキラの世界が見えている様な錯覚さえ感じていた。
その好きな人とめでたく恋人同士になり、キラキラしていた世界に色がついたのは1年前。

俺は今日、明日香ちゃんと恋人同士になって1年になる、なんともめでたい男だ。
そしてその記念すべき1年突破日の今日は明日香ちゃんと約束をしている。
それは1週間も前に決めていた事だ。

いつもの様に下校して、最近オープンした喫茶店に行って、明日香ちゃんが俺の家に泊まる。
もちろんお泊りなんていうのは付き合い始めてから一度もやった事がない。

だから俺は今日が楽しみで仕方がなかったんだ。
1日中、明日香ちゃんといられる。夜も、朝も。そう考えただけで笑顔になる。


―キーンコーンカーンコーン

終わりのチャイムが鳴ると俺はマッハで明日香ちゃんのクラスへと向かった。


「明日香ちゃんいるー?」


ガラリとドアを開け、目の合った明日香ちゃんの友達に尋ねてみる。


「え、明日香なら帰ったけど?」

「マジで!わかった、ありがと!」


明日香ちゃんは何を思って1人で帰っているのだろうか。
俺はまたマッハで学校を出た。

走り続けること約2分ぐらいだろうか。
後ろ姿でもわかるぐらいの愛しの明日香ちゃんの姿があった。


「明日香ちゃん!・・・って、え?」


俺の声はたぶん・・・いや絶対聞こえていない。


『明日香ー、彼氏はいいの?』

『うん、良いの。今日はアンタと遊ぶ!』


前から聞こえる楽しげな2人の会話。
耳を背けたくなる嫌な会話。

終わった。
そう思った俺は涙も流さずに家の方向へとただ1人で帰って行った。


end
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