Love Short Story's

・初恋は甘いビター

俺は高校生にもなるのに恋なんかした事がない。女にトキメクなんて以ての外。
だけど別に恋がしたくないって訳じゃない。

俺は、まだ人を好きになるという感情を知らないだけなんだ。

“恋は突然訪れる”と誰かが言っていた。
まぁ俺は、これっぽっちも信じた事がないけどな。
そんなのバカか、と思うぐらいだ。


今日も、いつもと同じ様に学校に行くため混んでいる電車へと乗る。
朝の電車はいつも満員でキツイ。
オッサンの汗の臭いとか、朝っぱらなのにオバサンのキツイ香水が鼻につく。


そして俺は学校近くの駅について電車から降りた。


ドンッ-
満員電車なら、さも当たり前の様にサラリーマンとぶつかった。
その拍子に持っていた携帯が地面へと叩き落とされる。

うわ、やべぇ・・・。

急いで落ちた携帯に手を伸ばす。
でも携帯は誰かの手によってあっさりと奪われた。

文句を言おうかと顔を上げる。


「落ちましたよ?」


しかし俺の前にいたのは俺と同い年ぐらいの女子高の奴だった。
ニッコリと俺に向けられた太陽の様に輝かしい笑顔。
ドクンと心臓が音を鳴らした。

俺は差しだされた携帯を、ゆっくり受け取った。


「ありがと。」

「うん、またね!」


そう言うと彼女は笑顔と共に駅のホームから消えて行った。

不覚にも彼女が言った「またね!」の言葉に期待する。
いつかまた会えるのかよ・・・。

“恋は突然訪れる”

この言葉、嘘じゃねえかもな。
少しぐらい信じてみるか。
そんでさ、もう1回・・・彼女に会える様に頑張ってみるか。


end
< 34 / 53 >

この作品をシェア

pagetop