Love Short Story's
私の名前はあえて書かずに想いだけを書いた。

この机に残したラブレターを見るのは明日だと思う。
明日には、私が引越ししちゃってる。
だけど想いさえ届けば、それで良いんだ。
最後に、この日のために用意したプレゼントを引き出しの中にそっと入れた。

それは山本が私にくれたシャーペンと同じ物だ。
同じ物を持っていると何だか親近感がわくと思って買ったんだ。

そして私は見慣れた教室をジッと見つめた後に教室から出た。
もう、これで最後なんだなと思うと何とも言えない感情に陥った。
とぼとぼと1人で帰る道のりは普段よりか一層寂しく感じた。


「ユキナ、引越しの準備できてる?」

「うん。もうバッチリだよ!」


家に帰ると大きな家具はなく、無造作にダンボール箱が置いてある。
夜になると、引越しする実感を感じて思わず涙が出そうになった。


・・・ピンポーン―

こんな時間に誰だろう。
近所の人か、宅配便の人かな。

なんて思っていると私の部屋のドアが開きお母さんが「ユキナ、お友達っていうか・・・その、男の子が来てるわよ?」と言った。
私はすぐさま玄関へと向かう。もしかしたら・・・と期待を胸に。


「・・・山本。」


その期待は裏切られる事がなかった。


「よぉ。遅くに、ごめんな。」

「ううん。・・・どうしたの?」

「どうしたの、じゃねーよ。お前は書き逃げするつもりか!」

「書き逃げ?」


その時は意味が、よくわからず私の頭は混乱していた。
何かしたかな、私。


「お前、俺の机に書いただろ?」

「あ・・・!」


ようやく理解をした私は急に恥ずかしくなった。
見られるのは明日だと思っていたのに、見られたなんて・・・。


「部活で忘れ物したから教室まで取りに行ったんだよ。」


それで、見られたのか。
何だかタイミングが良すぎて少し笑えて来た。
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