桜咲くこの並木道で
駅に戻ってきたときには、

すでに星が出ていた。


街灯にぼんやりと照らされた桜は、

優しく暖かく、

けれど冷ややかにあたしを包む。



いつも通りでありながら、

少し雰囲気の違うその空間へ、

あたしは足を踏み出した。


しばらく歩いたところで、

ふいに足が止まる。



今朝のあの光景が頭をよぎった。



あたしはゆっくりと上を見た。


咲き誇る桜を。



その瞬間、あたしは嬉しくて、

嬉しくてたまらなかった。



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