ダンデライオン
車に乗り込んで、悠斗くんは苦笑いを浮かべた。

「"あの"眞壁悠斗、か。やっぱ俺って女癖悪いよな。」

「そんなことっ、」

「…真澄ちゃんはもう高3だから、きっと彼氏いたことあると思う。そのとき、その彼氏さんのこと本気だった?」

「…はい。」

彼氏なんてもうしばらくいないけど、あの頃は彼氏が大好きだった。

「―俺、今までの彼女は本気じゃなかった。矢部マコもその前も…最低だろ?」

耳を疑った。…本気じゃない?
今までの熱愛報道は、本気じゃなかった?

「俺は昔からひとりだった。誰からも必要とされなくて、子役になったのは誰かに必要とされたかったから。」

悠斗くんのその表情は初めて見た。今にも消えてしまいそうな弱々しい笑顔。

「…悠斗くん、」

「幻滅した?」

「いえ!」

ありがとう、そう微笑んであたしの頭を優しく撫でて車を発進した。
< 123 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop