ダンデライオン
「どうして、」

「ちゃんと、しようと思って。」

「報道のことなら…あたし、平気です。モザイクだったし誰もあたしだって思わないし…だから気にしないで。」

そう言うと、悠斗くんはただ微笑んで口を開いた。

「少し、出られる?」

「はい…。」

悠斗くんはありがとう、って言って急に来てすみませんとお母さんに頭を下げた。

悠斗くんは少し歩こうと、車の横を通り過ぎた。

悠斗くんは小さな公園のぶらんこに腰掛けた。
この公園にはぶらんこがふたつ、砂浜、小さな滑り台しかない質素なもの。

「真澄ちゃん、ここ座って…」

あたしは頷いて、悠斗くんの隣に座った。

「俺、真澄ちゃんのこと特別だと思ってる。真澄ちゃんには俺のこと色々知ってほしい。格好悪い俺を見て嫌だって思われるかもしれないけど真澄ちゃんには飾らない俺を見てほしい。」

それはどういう意味?
ね、悠斗くん。あたし、わかんないよ。

「好きだよ。真澄ちゃん。」

「え?」

「あの歌を聴かなくなったのは、真澄ちゃんがあいつの代わりに俺の心に居座ったから。」

涙が溢れた。
悠斗くんを変えたのはあたし…?
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