ダンデライオン
阿由葉は、きっと阿部の存在に気付いてるはずなのに阿部の方を見ないで、あたしの腕に引っ付いたまま歩き出した。

「阿由葉?」

「…今、阿部と話したらあたし…決心鈍りそうだから。」

小さな声で、でも確かに、阿由葉はそう言った。

「阿由葉…」

「今日、伝える。それできっぱり諦める!そしてまた新しい恋見付けるんだ。」

いつもと変わらない、屈託のない笑顔で、阿由葉は言った。その笑顔の内側で、きっと声を出して泣いてる。
そう思うと、いたたまれない。

「真澄は優しいから、今でも自分を責めてるでしょ?あたしは平気だから。だから、もう許してあげて…真澄はなにも悪くない。どうしようもないことなの、今回のことは。だから、だからね…」

「阿由葉、」

阿由葉の方が優しいよ。
涙目になりながら、あたしを心配してくれてる。

「…今日、告白するんでしょう?なら泣かないで。真っ赤な目で告るの?」

「そだね。」

その小さな細い指で目尻を拭う阿由葉に、あたしは笑顔しか贈ることができなくて歯痒かった。
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