ダンデライオン
「…そう。知ったこっちゃねーよ。」

悠斗が、悠斗じゃないように映った。
どうしてそんな冷たい目をしてるの?お父さんとなにがあったの?

「恨むなら、私を恨んで!昭人(アキト)さんを許してあげて…」

「―あなたも、父さんと同じくらい恨んでます。あなたがいたから母さんは…あんなに傷付いた。
あなたは知らないでしょ?母さんの最期の言葉…昭人さん、こんな私でごめんなさい。そう言って、死んだんだよ。」

こんなにも悲しい最期を悠斗は小さいときに見てたんだ。そう思うと、あたしは悲しくなった。

「母さんの最期を見取ったのは俺だけだった。あなたが父さんを母さんから引きはがしたお陰で母さんの最期は、惨めだった。」

あたしが泣くのは変だけど涙が溢れた。
悠斗には、辛い過去があった。

「…本当に申し訳ないって思ってる。でももう…20年くらい経ったんだから、許してあげて。お願いします、一目だけでも。」

「悠斗、行って。」

「え?」

「―悠斗のお父さん、なんだから。悠斗が生まれてくれたのはその人がいたから…だから、」

すると、悠斗は小さく溜め息を吐いた。
部外者が口出しするな、そう思ったかな…。

「……病院はどこですか。」
< 162 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop