ダンデライオン
「父さんは、心臓が悪くてな…あんまり持たないらしい。」

外を見ながら、悠斗のお父さんは言った。

「…まだまだ、生きたいのにな。」

「充分だろ。母さんは20代で死んだんだ。」

「…」

悠斗のお父さんはその言葉に視線を悠斗に移した。

「どうして…母さんを、母さんの最期を見取ってやらなかった!ずっと、名前を呼んでたんだ、手を握ってた俺じゃなくて―お前の名前を!」

声を荒げて、涙を一粒零して、訴えた。

「…すまない。」

「悠斗くん、違うのよ…」

「違う?母さんから父さんを奪ったのは他の誰でもない、あんただろ!」

「悠斗、」

きっと許せないはず。
悠斗はたったひとりで悲しい実母の最期を見届けたんだから。
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