ダンデライオン
悠斗にとって、お母さんと過ごした日々は人生の5分の1くらいしかない。
その間にお母さんは病気になって、入院して…天に召され…きっと、一緒に食べたり、眠ったりしてたのは本当に短かったと思う。

だから余計に、お父さんを憎んだんだろう。
お母さんが苦しんでるのに、そんなお母さんを放るなんて…理解できないって。

「悠斗くん…これ、」

「槙子っ…!」

槙子と呼ばれた悠斗の継母はバッグから本を取り出した。

「…誤解を解いてほしくて、いずれ渡すなら今って思って。」

「これ…」

「お父さんが書いた本よ。」

"最初で最後の恋文"そう書かれていた。作者は何故か、眞壁ではなく佐川だった。

「…佐川、か。」

"佐川"って意味はなんだろう。そんな考えてたあたしに、悠斗は答えをくれた。

「母さんの旧姓だよ。」
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