ダンデライオン

「眞壁だと、お前に迷惑掛かる気がしてな。眞壁なんて捜せば結構見付かるかもしれないけど念のためにな。
悠斗にはもう、迷惑掛けたくないんだ。」

「だから、母さんの旧姓使うのか。こんな本書くために？」

「この本だからよ。」

悠斗の継母は、どこか悲しそうに笑ってそう言った。

「悠斗くんのお母さんのために、お父さん書いたの。自分がもう長くないってお医者さんに言われた日…お父さん、暁美(ｱｹﾐ)さんとの思い出をどうしても文章くんに残したい、悠斗に残したい、そう言って書きはじめたの。」

そして書き上げた原稿を出版社に持って行ったのはこの悠斗の継母。何社も梯子してようやく認めてくれた出版社で、この本を出すことになった。

「…悠斗くん、時間があったらこれ読んでね。お父さんの気持ちを受け取って。」