ダンデライオン
悠斗のお父さんは、ただはにかんでいた。

「…俺、父さんのこと世界一恨んでる。母さんが不憫で仕方なくて。でも、感謝してんだ。ガンの治療には金がすごい掛かるから。その金を必死に稼いでくれて、ガキだった俺にも何不自由ない生活をさせてくれた。だから感謝してる。」

「悠斗…俺を憎め。母さんにしたことは許されることじゃない。そのかわり悠斗…お前が憎むのは俺だけにしなさい。
他の人は憎むな。人を憎む顔はどんなに端正な顔立ちでも醜いんだ。」

「そうだな。」

確かに、人を睨む顔は綺麗じゃない。例え、絶世の美女だって…。

「…お嬢さん、悠斗をよろしくお願いします。こいつは少しひねくれてますけど、いい奴なんです。父親が言うのは説得力ないですけど。」

悠斗のお父さんは優しく微笑んでそうあたしに話し掛けた。

「あたし、悠斗さんの優しいところに惹かれたんです。誰よりも思いやりのある、悠斗さんに、あたしは…」

最初はただのファンだった。でも悠斗の優しさがいつの間にか、憧れを恋に変えた。

「…真澄、」

悠斗は鼻を掻いて小さく笑った。
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