ダンデライオン

直美のいとこが、芸能人だろうとそんなことは関係ない。きっと言わなかったのは、言いたくなかったからだと思うの。

だから、直美に妙なせんさくはしなかった。


そんな、ナホさんとの出会いから数日経ったある日。


「真澄!」

予備校の教室で苦手な古文の問題を解いていると直美に呼ばれた。

「直美。」

「奈穂美ちゃんから聞いたよ。」

小さく微笑んで、直美はそう言い、あたしの隣の席に座る。

「…奈穂美?」

それは初めて聞く名前。

「あ、ナホの本名ね。…どうして会ったこと話してくれなかったの?」

「……聞かれたくない、ことかと思ったの。直美、なにも言わなかったから…誰にだって聞かれたくないことあるでしょ?」

そう言うと、直美は小さな声でありがとう、と言った。
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