ダンデライオン

数日が経ち、もう金曜日。


奈穂美ちゃんと一緒に食事する約束をした。
あの日以来だから少し緊張。

2人きりで会話は成り立つかな、って不安。

そんなことを抱えながら、予備校への道を歩く。


そしたら、バッグから振動が伝わった。
バッグから携帯を覗くと、緑のランプが点滅していた。着信だ。

咲智からだった。

「もしもし?」

『まーすーみーっ!』

「咲智どした?」

耳元で咲智の大きな声を機械越しから聞いて、耳が痛くなりそうだ。

『あのね、あのね!湊(ミナト)が、明日映画行こうって!』

「…湊?」

聞いたことない、名前にあたしの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

『もう!海藤くんっ!』

ああ、いつか咲智が可愛いって言ってたサッカー少年か。

「うっそ!やったじゃん!」

そうか、デートするんだ。素直に嬉しいよ。まるで、自分のことみたいに、嬉しい。

『えへへ、ありがとー!まさか誘ってくれるなんて思わないからさ!感激して涙出そうー。』

きっと今咲智は頬が緩みきったあのふわふわな笑顔を浮かべるんだろう。

幸せそうなその声を聞いてあたしまで頬が緩む。

『あ、ごめん。今予備校だったりした?勉強邪魔しちゃった?』

さっきの声と声色を変えて心配そうにそう言う咲智。


「ううん、向かってるとこ」

『そう。じゃ、切るね!またねえっ!』

「またね。」
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