ダンデライオン

予備校が終わり、ほとんどの生徒が帰路に着く中あたしは奈穂美ちゃんに指定された居酒屋さんに向かった。

なんでも全席個室の居酒屋で、業界の人達が打ち上げによく利用するとか。


「…ここ、か」

繁華街から少し外れた細い道を通り、一軒の居酒屋さんの前に立った。

携帯のメール画面と看板の文字を確認し、そう呟いて小さく頷き、中に入った。


「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」

同い年くらいの女性がニッコリ笑いあたしを接客する。

「いえ、待ち合わせしてまして…西條と申します。」


「はい、西條様ですね。お待ちしてました。ご案内致します。」

営業スマイルを崩さず、彼女はあたしを案内してくれた。
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