ダンデライオン
通された個室には、名前はわからないけど綺麗なオレンジ色のお酒を飲んでる奈穂美ちゃんと、黒髪のつりあがった目をした男の子、そして……
あたしの大好きな、大好きな悠斗くんの姿がそこにあった。
「おーっ真澄だっ!座って座って!」
奈穂美ちゃんは自分の隣んぽんぽんと叩いて、座るように促した。
「勉強お疲れ様!」
「ほんと、受験生は大変…」
そう奈穂美ちゃんに言って、あたしは悠斗くんとつり目の男の子に視線を移す。
心臓が、バクバクと大きく脈打つのが奈穂美ちゃんに聞こえないだろうか…。
「は、はじめまして!西條真澄ともももう、申しますっ。」
ああ…恥ずかしい。
言葉はどもるし、声は裏返るし…穴があったら入りたい。
そんなあたしの淡白な自己紹介を聞いて悠斗くんはくすりと小さく笑う。
笑われて恥ずかしい…、でもその顔に見惚れるあたしがここにいて。…どんだけ、彼にハマってるんだろう。
「俺は眞壁悠斗、よろしくね。…君もしかして、この前の試写会に来なかった?」
ドキッとした。まさか、そんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったから。