ダンデライオン
携帯の小さな画面に、『眞壁悠斗』の文字。その下に番号とメアド。
嬉しくて、嬉しくて…
携帯が堪らなく愛しく思えて、あたしはそのピンク色の機械をぎゅっと抱きしめるように胸に当てた。
時刻は夜中の1時を少し過ぎていた。さすがに家に明かりは点いてない。
家族を起こさないように、ゆっくりゆっくりと玄関の扉を開けた。
階段も足音がしないよう、ゆっくり慎重に上がる。
「姉ちゃん。」
階段を上がりきったその直後、そんな声が聞こえた。
この声の主は、弟の雅巳(マサミ)。
「雅巳。」
「こんな時間までなにやってんだよ。」
少し呆れたような怒ったような声で、あたしにそう問う。
「…友達、と少し話してて。」
「こんな時間まで、高校生が?」
「社会人の友達…」
「だったら尚更だよ。未成年をこんな遅くまで帰らせないなんてどうかしてるんじゃないの、その友達。」
雅巳の言い分はごもっともだ。でも…