ダンデライオン
「ただいまー。」
そんな声と共に、玄関の戸が開く音がした。
「帰ってきた!」
雅巳はそう言って、玄関まで走る。
「父さん!父さん!」
「ん?誰か来てるのか?」
「こっち!」
そんな会話が廊下から聞こえる。
雅巳に腕を引っ張られて、リビングに入ってきた、ジャージ姿のお父さん。
「君は…」
お父さんは悠斗くんを見て、目を丸くした。
無理もない。テレビの中でいつも観てた人物が今、我が家にいるんだから。
「はじめまして、眞壁と申します。」
悠斗くんはすっと立ち上がり、会釈した。
「…は、はじめまして。…君が、どうしてここに?」
そうお父さんが尋ねると悠斗くんはまた頭を下げた。
「申し訳ありません、昨夜真澄さんと遅くまで一緒にいたのは僕です。」
「え?」と家族の声が綺麗に重なった。