ダンデライオン

「眞壁くん、いい子ねっ!」

にこにこしながら、いつの間にかあたしの隣にいたお母さんが言った。

「う、うん…」

鼻に微かに残る、悠斗くんの香り。頭に微かに残る、悠斗くんの温もり。

「でもさ、演技じゃねえの?」

ひょっこり、あたしの真横に顔を出して単調なトーンで雅巳は言う。

「雅巳、そういうこと言わないのよ?眞壁くんに失礼でしょ?」

そうお母さんが言うと、納得出来ないような顔のまま雅巳は再び口を開いた。

「あのな母さん。あいつ、女たらしだぜ?次から次へと女変えてさ。姉ちゃんにまで手ぇ出すつもりかよ?」

「雅巳!」

あたしはそんなこと言う雅巳の頭を叩いた。

「いて!」

「そんなこと、言わないでよ。」

「俺は姉ちゃんのこと心配してんだよ!」

そう雅巳は言い残し、わざと大きな足音を出しながら2階に上がっていった。
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