ダンデライオン

「雅巳は、真澄のこと大好きだからねー。仕方ないわよ。」

苦笑いを浮かべてお母さんはあたしを宥めるように言い、去っていく。

「…雅巳。」


心配しなくても、悠斗くんはあたしなんか相手しないよ。

そう心の中で呟く。
どこか、胸が痛くなるのはどうして?…ああ、あたしは悠斗くんのファンだから。だからどこか虚しいんだね。


「真澄。」

振り向くと、お父さんがいた。

「…今から、勉強やるから。」

「そうじゃなくて。」

小さく微笑み、続けた。

「父さんは、彼のことよく知らんがいい青年だと思うぞ。お前が、あの人をなんで応援してるのが分かるよ。」

そう言い、あたしの肩を叩いた。

「お父さん…。」

「彼ならお前を任せてもいい、かな?」

そうへらっと笑う。

「もう、悠斗くんとはそんなんじゃないから。」


ただ、芸能人とそのファン。
ただ、お互い顔見知りなだけ。


特別なことはなにもない。
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