ダンデライオン
「な、なにするんだよ!姉ちゃん!離せっ!」
そうじたばたするから余計に離したくなくなった。
「雅巳、きっとあたしは相手にされないから。そんな余計な心配しなくていいんだよ?
…それにね、確かに悠斗くんは恋多き俳優で有名だけど、ひとつひとつの恋愛に一生懸命な人だと思うの。だから悪く言わないで?」
「…これだから、熱狂的ファンは。」
そう呟いて、あたしの腕を解いた。
「姉ちゃん。」
「ん?」
「悪かったな、眞壁さんのこと悪く言って。」
そう俯いて言い、トーストにかぶりつく。
「分かればよろしいっ!」
雅巳のまだ一度も染めたことない漆黒の髪をぐしゃぐしゃにした。
「なにすんだよ!馬鹿!」
「馬鹿!?そんなこと言うのはこの口かー!」
そうじゃれるあたしと雅巳を、両親は穏やかな目で見ていた。