ダンデライオン
テンポのいい歌が、静寂な部屋に響いた。
それは、着信を知らせるものだった。
一瞬、悠斗くんかな?
なんて思ったあたし。…馬鹿だね。
『着信 阿由葉』その文字を見て、あたしは通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『もしもし?真澄おはよっ。あたし、阿由葉!』
「おはよう、阿由葉。」
阿由葉の元気な声であたしの頬は少し緩んだ。
『今日、今から一緒に勉強しない?』
「え?」
阿由葉の口から"勉強"なんて言葉聞いたこと一度もない。だから思わず、聞き返した。
『勉強!study!』
「英語に訳さなくていいよ。なんでいきなり?」
一体どういう風の吹き回しだ。
『馬鹿ねえ!今年受験でしょ?』
「そうだけど、阿由葉って就職だったよね?」
そう問うと若干ムッとした声で阿由葉は言う。
『就職やめて、専門学校行くことにしたの!』
「あ…そうなんだ。」
『じゃあ、あと1時間くらいで行くから準備しといてね!』
阿由葉はそう言って強引に電話を切った。