ダンデライオン
薄っぺらい機械から流れる悠斗くんの声。それをただ受け流すように聞きながらあたしは箸を動かす。

「…姉ちゃん?」

その小さな呼び掛けにあたしは視線を雅巳に移す。

「ん?」

「―なに、泣いてんだよ。」

泣いてる?誰が?
そっと頬に手を添えるとぬるい感覚がした。

なんで、泣いてるの?あたし

馬鹿にも程がある。


そのとき、あたしは嫌でも自覚してしまった。…ううん、認めてしまったの。
ずっと否定してた想いを。

あたしは、悠斗くんを好きになってしまったと。
的確に言うと、憧れから恋に変わったこと。いつからか、あたしの中の彼は芸能人から男の子になっていた。

「…映画、思い出しちゃって。」

「―姉ちゃん、馬鹿だな。」

そんなバレバレな嘘をついた。雅巳は、頭がいいからそんなの嘘だとわかったと思う。でも、雅巳はその嘘に気付かないふりをしてくれた。

「うるさいよ。」

ありがとう、雅巳。
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