ダンデライオン
「そろそろ、予備校に行く時間よ。支度しなさい。」

「うん。」

お母さんから離れてあたしはトートバッグにテキスト、ノート、筆箱を入れて部屋を出た。

照り付ける太陽も、けたたましい蝉の声も苦痛じゃない。なぜだか、ちっとも嫌じゃない。

ジーンズに捩込んだ携帯が震える。誰からの着信か確認しないまま出た。

「もしもし?」

『もしもし。お・れ』

「…っ、悠斗くん!?」

『びっくりした?』

「ど、どうして…」

まさか電話をくれるなんて思ってもいなかったから頭が混乱する。
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