リナリア
さっきしかめっ面をしていた奈菜の顔が、今は怒ってる。
ど、どうしよう。
また怒らせちゃった。
そう思っていると「友達になりたいってのは、いいのよ」って、煙草に火を付けながら奈菜は言葉を落とした。
「でもね、知らない女の人が隣にいるのは嫌だってのは、おかしいわ。そもそもそれは平津君が可哀そうよ。佐智の言う通りにしてたら、彼はいつまでも彼女が出来ないわ」
奈菜の言葉を聞いて、それもそっか。って納得する。
確かにあたし、おかしなことを考えてるのかもしれない。
「ねぇ、佐智。さっき悩まないでっていったけど、やっぱり取り消すわ」
「え?」
「佐智、しっかり考えなさい。平津君が佐智にとってどんな位置にいる人なのか。佐智にとって、どんな存在なのか」
「わ、わかった。ごめんね」
「やだ、なんで謝るのよ。あたし、怒ってないわよ。だから、ちゃんと平津君の事考えるのよ?」
「うん」
「じゃああたしバイトがあるからもう行くけど、約束よ?別に明日までに・・・とか、期限なんて付けないから、沢山時間使っていいから、しっかり考えるのよ?」
「分かった。ありがとね」
「ええ。また明日」
そうして、あたしと奈菜は笑顔で別れた。
その日アパートに帰ってから、奈菜に言われた様に壮太君の事を考えてみたけど、考えれば考えるほど思考は脱線し、ドツボにハマるだけだった。