リナリア

「いや、なんで俺が最近女の子といるの、知ってるの?」

「はぁ!?」



 こ、この男、散々狙ったかのようにあたしの前を通り過ぎてたくせに、「なんで知ってるの?」だと!?

 ふ、ふざけるのも大概にして欲しい。



 初めて見た時、別れた次の日にそれを見た時、あたしは物凄くショックだったんだ。


 しかもその日は壮太君、あたしを見たじゃないか!!!!!


 とても冷たい、軽蔑したような、見下すような眼で、あたしを見たじゃないか!!!!!




 あたしにとっては思い出しただけでも悲しくなるあの日の記憶は、壮太君にとったら別になんてことない、日常の記憶なんだ。


 そして、その記憶の中に、あたしの姿はないんだ。






「佐智?・・・・・なんで、泣くの?」


「え?」



 言われて頬を触ると、確かに生暖かい水があたしの頬を流れていた。




 あぁ。


 泣くくらい、ショックだったのか。


 あたし、実は重症なんじゃん。


 あたし、壮太君の事、好きなんじゃん。


 男の人として、好きなんじゃん。



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