リナリア
5.都合のいい女?
「さぁ~ちっ」
「ん~・・・・・」
「もうっ、だらしないわねぇ。食べる時ぐらい、シャキッとしなさいよ」
壮太君に好きって言って以来、何も言ってもらえなかったあたしは、普段からシャキッとしていなかったのに、それに輪をかけてひどくなり、毎日のように奈菜に注意される日々を送っていた。
「もうっ。いい加減、元に戻りなさいよ」
「ん~・・・。でもなんかやる気出ないんすよ~・・・・・」
それを聞いた奈菜は盛大な溜息をついて、「カラ元気でもいいから出してくれないと困るわ」といいながらコーヒーを口にした。
あたしはテーブルに顔を乗せたまま奈菜を見る。
「ねぇ、奈菜」
「なぁに?」
「奈菜は、こーゆー時今までどうしてたの?」
「あたし?」
「うん」
そうねぇ。って、奈菜は口元に手を持って行きう~ん。って、考え始める。
「美容院とかネイルサロンに行ったり、思いっきり買い物したりよ。あぁ、あとはお風呂で思いっきり泣くとかね」
「う~ん・・・・・。あたしに出来そうなのは、お風呂っすかねぇ」
むしろ、それしかないんだけれど。
でも、奈菜の言葉を聞いて「あぁ」って、思い当たることがいくつかあった。
急に買い物に行こうと電話がかかって来て、欲しいと思った物は片っ端から購入し、頻繁にネイルが変わったり、とにかくたまに、奈菜にはそういう時がある。
なるほど。
今まで深く追求した事無かったけど、あれらは失恋した時だったのか。
「とりあえず、食べ終わったら買い物行きましょう。あたし、欲しい物あるのよ。付き合ってね」
そう言いにっこり笑った奈菜に「うぃ~」と返事をしたら「もうちょっと気のある返事しなさいよ」と言う言葉と同時に、チョップをかまされた。