リナリア

 さっき、講義が終わって教室を後にしようと廊下に出たら、壮太君がいた。




 あたしの知らない女の子と一緒に。



 壮太君、その子の腰に手を回してた。



 それはとても親密そうで。



 キスこそしてないものの、してもおかしくないぐらい、二人は至近距離で話をしていた。





 そんな壮太君を見つけてしまって、なんだか悲しい気持ちになったあたしは壮太君を見ないように通り過ぎようと思った矢先、彼と目が合って。





 いつも通り、へらりと笑って通り過ぎるつもりだった。



 けれど。




 壮太君は見下すような、軽蔑するような、何だか分からないけど、とにかく冷たい目であたしを見ていた。




 それに気付いたらあたしは動けなくなっていた。




 目の前の物も、見えないぐらいに。
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