オッドアイ
「なんだなんだ。何ださっきの銃声は」

テロが起こっている美術館の入り口からちょっと離れた駐車場で、全く活動しない救急車と一緒に停まってあるワゴン車のドアがガラッと開いた。

「おい、そこの警官、なんださっきの銃声。」

ドアを開いた30半ばの男はやる気の無さそうな目をしながら、近くを通った警官に聞く。

「あぁ、赤影刑事・・・。」

その刑事は全くやる気
の無い目をしている。


「なんか邦良警部補が乱射したらしいですよ。美術館の中に入れろって。」

「乱射!さすがに上も黙っちゃいないだろ。今度こそ辞職だ辞職!」

その刑事は嬉しそうにイヤホンを取る。

それと反対に警官は怪訝そうな顔をした。

「でも誰もケガしてませんからね。それに問題になったってコレで解決ですよ。いーですよね金持ちお嬢様は」

そういって手でいやらしい形を作る。

「えーでも今、邦良財閥ドタバタじゃん。系列店襲撃されたり会長殺されたとか誤報来たりさ」

「だからこそ頑張ってるんじゃないの?」

後ろの席から、女の淡々とした声がした。

その女も刑事の一人だが、刑事とは言い難い、まるで合コンに出向くOLのような格好をしている。

「少しでも早く犯罪王子を捕まえたいのよ」

せっかくの若い肌を覆い隠すかのように、女はチークをパタパタと頬に押し付けた。

「だからってムチャあんだろ。犯罪王子捕まえるなんてさ。あいつ100人斬りするって噂だし?」
そう男がイヤホンをかけ直そうとすると、また
ドカンッ
と大きな爆発がする。

「うわっもうまた爆発?口紅歪んだわもう!」

女はちょうど口紅を塗ろうとしたところでバットタイミングだったらしく、カンカンに怒った。

ちなみにこれは爆発を起こすテロに対する怒りではない。

「部長!その辺にウェットティッシュ無い?」

女は運転席に座ってるおじさんに話しかける。

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