流星
「…あたし、最近変なんだよね」
「変?どこが?」
「あ、体とかじゃなくて、……記憶?」
「記憶?」
「あたしと健と、もう1人、いつも一緒にいた人がいるの。あたしたちより年上の…」
驚きよりも、落胆のほうが大きかった。
やっぱり俺はまだ「健兄」のままだった。
勇人は消えてしまったのかもしれない。
「そんな人いないでしょ?でも、最近お母さんが健のこと『勇人』って言ってて…」
あーあ、おばさんのおっちょこちょい。
「もしかして、あたしだけ忘れてるの?健は『健』じゃなくて『勇人』なの?」
そう、俺は勇人だよ。
健は俺の兄貴だ。
思い出すのがもっと早ければよかった。
そうすればここまで苦しまなかった。