流星
――5年前
なんでも今日は星がよく見えるらしい。
いきなり「出かけるぞ!」と部屋に入ってきた健を見て、わたしはため息をついた。
こんな日も初めてではないからだ。
「星奈、早くしろって!」
「高いとこやだって言ったじゃんかぁ…!」
嫌がるわたしの言葉などまるで無視。
健に腕を引っ張られ、不本意ながらマンションの屋上に上がっていく。
「……さ、っむい……」
「あ?そんな薄着してっからだろ!」
「だっ、だって…――」
――健が急かすからじゃん!と言おうとして口を開くと、肩になにかが掛けられた。
それは健のお気に入りのコート。
見た目はすごく薄く見えるのにも関わらず、中がふわふわしていて暖かい。
今まで1度も貸してくれなかったのに……
「……んだよ」
「…あ…、ありがと……」
「別に、風邪ひかれたら困るだけ」
「え?」
「お前の親こえーし」
そっぽを向く健の耳は赤くなっていた。
恥ずかしがりやのくせに素直じゃないから、誤解されやすいけど、わたしは健が好き。
きっと、他の誰よりも1番好き。