“俺様”大家の王国




私が歌い終えて、ついでに料理を作り終えて器に盛っている最中に、

掃除機の音が止み、ミエロがこっちにすっ飛んできたのだ。

(んだよもう。

埃が入らないように、早くラップしなきゃ……)

「今の……」

「何ですか?」
 
なるべく作業を手早く終えて、

さっさと帰りたかった私は、彼を見ずに尋ねた。
 
だから、彼が驚いた顔で固まっているのなんて、全然知らなかった。

「歌って。もう一度」

「え……」
 
『え』というより、発音は『げ』に近かったかもしれない。
 

ぐえっ聞いてたのかよ、という反応だ。
 

恥ずかしいし、嫌だった。

だって絶対、からかうつもりでしょ。




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