“俺様”大家の王国
「それにしても……彼は、
僕の事をずっと同性愛者だと思ってたんでしょうか」
考え事をしているうちに、気の毒にも彼は彼で、
地味に悩んでいるようだった。
私は、話題を変えることにした。
「そういえば、今日十郎さんは、どこへ行ってたんですか?」
しかし――それは、タブーだった。
十郎さんの態度が変わったのを、
一瞬だったけど、私は見逃さなかった。
冷たく凍り付いたその中に、
怒りやストレスを閉じ込めたような印象。
何か、変だ。
こんなの、十郎さんじゃないって思った。
(怖い……)