“俺様”大家の王国
「まあ、上出来じゃない」
メイクまで終わると、母は満足げに笑った。
鏡の中には、不機嫌そうにぶすっとしている――だけど、
別人のような自分がいた。
セレブお嬢様の出来上がりだ。
「これなら、どこへ出しても恥ずかしくないわね」
私は答えなかった。
一流の技術を駆使して、一流の服を宛がえば、
誰だって綺麗になれるに決まっている。
それこそ、素人のメイクやファッションと、
比べ物にならないのは当たり前だ。
それを、分かっていない母が嫌だった。