“俺様”大家の王国
 


へらへら笑った途端、電車が揺れた。

ドアと乗客に挟まれて、苦しいを通り越して痛い。

ギヒャー!


「……大丈夫じゃないようですね」
  
ふと、十郎さんは私から手を放すと、ドアに両手を突いた。

私の頭の両横にいきなりだったので、何事だ、と焦る。


だけどそれはすぐに、

私と彼との間にスペースを作るものだと分かった。

手に力を込めて、背中側の乗客を押し戻しているのだ。


(そ、そこまでしなくても……!)




< 184 / 534 >

この作品をシェア

pagetop