“俺様”大家の王国
暖簾の隙間から、人が動くのがちらりと見えた。
咄嗟に「いらっしゃいませ」と飛び出すと、それは知った顔だった。
「滝野……!」
「久し振り~!
たまたま近くに用事があったから、来ちゃった。
つっても、緒方がいるかどうか分かんなかったから、バクチだけど」
「やだあ、連絡してくれれば良かったのにー。
不意打ちじゃん」
「したら逃げてたんじゃないの?」
「まっさかー!」
お互い、考えている事は分かり切っていたので、
自然に笑いが起こった。