“俺様”大家の王国
滝野まゆりは、高校時代の私の友人だ。
しかし、彼女が大学進学を期に神奈川で一人暮らしを始めたので、
今は滅多に会えなくなっていた。
「今、混んでる?」
夕食には少々、遅い時間だ。
滝野の他には、家族連れが座敷に一組、
男性客二人がテーブルに一組いるだけだった。
「そうでもないよ。お座敷にする?」
「ううん、テーブルでいい。あー、お腹空いちゃった」
「ははは、今お茶持って来るよ」
お茶やお絞りを取りに厨房に戻ると、
ざる蕎麦の用意をすっかり終えた畑野さんが、
興味深そうに、「なぁに、知り合い?」なんて尋ねてきた。