“俺様”大家の王国
「ええ、高校の友達です」
「女の子?」
「はい」
「何か、随分声が低いんじゃない?
男の子かと思っちゃった……彼氏とか」
「だから、そんなのいませんってば」
私は、苦笑した。今度は本気で。
「お茶行こうか?」
「あ、行きます。
ついでに、注文も取って来ちゃいますね」
「OK」
しかし、私が滝野にお茶を持って行った時、
丁度別の卓から呼び出しがかかった。
滝野はまだメニューと睨めっこをしていた。
畑野さんは、茹で上がった蕎麦を受け取っているらしく、
私に助けを求めてきた。
どうしてこう、忙しい時に限って面倒事は重なるのだろう。
「奈央ちゃーん!
六番、お座敷行ってー!」
「はーい!」
……この、些細な会話が決定打だったとは、思いもしなかった。